2.ハリー! ひっこめ

第2話

痛みと怖さで

ハリーの涙が零れ落ちる。

再び手の甲で

乱暴にぬぐう。


そうして

いったん機関銃をおろし

両手で頬を張る。


なんとか涙は

止まった。


だけど

この戦闘の景色は

地獄絵図のようだ

元居た国民はみな、

別の市に避難した。


破壊されつくした

街並み。見るも無残だ。


荒廃した建物に守られ

「南無三!」

ジョンが口で

手りゅう弾のぴんを抜き

敵軍に放る。


前線に

ぐいぐい押してゆく

ハリー。


「どうした!

危ないぞ! もっと引っ込んで

撃て」


ジョンが

危なげなハリーの

背中に声をかける。


「もう俺は死ぬんだ!

お前たちのために

一人でも多くの敵兵を減らしてやる」


「ハリー」

ジョンがハリーに息をつき

見つめたとき、


空に空砲が一発あがる。


「ハリー! ひっこめ」

叫ぶジョン。

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