十三章:愛里を愛す勇気を下さい
第78話
駆けども駆けども、いっこうに前に進まないような気がする。
駆け出す右足が、左足が思うように回らず、何度ももつれそうになる。まどろっこしい、いらだたしい。僕の視界の両脇を流れる景色。ふきだす汗。早くも切れそうになる息。
こんなことなら普段から体を鍛えときゃよかっただとか。もっと早く気づけばよかった。そしたら、こんなに走らなくて済んだのにだとか。
いっそのこと、何も気づかなければ今こうして必死に駆けなくても済むのにだとか。どうして僕はもっとずっととてつもなき無神経じゃないんだろうだとか。だったらなんでもっとずっと優しくないんだろうだとか。結局全てが中途半端なんだだとか。色々山のように脳裏に翔り浮かぶ。
そして僕の脳裏に浮かぶ数多の雑念が、愛里の部屋をますます遠のかしているようでいて。
僕は叫ぶ。
駆けながら大声で絶叫する。全ての雑念という雑念を一気に振り払い、一秒一刻でも愛里の元へと駆けつけるため。
「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!」
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