第73話
「あのさぁ、オレたち恋人同士でしょう? 恋人同士なら、普通デートをするでしょう? 彼氏がどっか楽しいところつれてってあげるって言ってるんだから、素直に喜べばいいじゃん。
世の中には、彼氏が忙しかったり怠慢だったりして、大してデートに行けない女の子もけっこーいんだよ」
僕は上から目線で愛里を見下ろして感情をぶちまけ始める。やがては腰をかがめ、愛里の顔を覗き込んで、言葉をぶつけ続ける。
「ね、一体何が不満なの? 美味しいものでも、楽しい映画でも、遊園地でも、なんだって二人で楽しもうって言ってんだからさ。もちろん、オレのおごりで。
愛里に出せなんて、言やしない。いいよ、全部オレがおごるよ。オレのこの一ヶ月のバイト代、血と汗と涙の結晶を全部吐き出して、愛里様をご招待しましょう」
ほら、まーた僕のいつもの癖が始まった。
しゃべればしゃべるくるほどに、ついエスカレートしちゃう。だけど納得いかないもの。しょうがないじゃない。言葉は止まらない。
「むしろ、こんなすばらしい彼氏が持てたことを喜べば? 男として最高に配慮が行き届いてる。涙をちょちょぎらせて、すこぶる感謝して欲しいくらい」
僕の言葉が終わるやいなや、愛里は立ちあがり僕を両腕で突き飛ばす。いや突き飛ばそうとするも女のやわ腕、僕は一瞬足をもつれさせ、後ろに一歩身を引いただけだ。驚く僕をよそに愛里は僕をにらみ上げ叫ぶ。
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