第67話

「じゃあ、公園で散歩でもするか? 公園ならお金もかからないし。十分 南に歩けば、ヨーロッパ調の噴水がある。二人で十分歩いて、プチヨーロッパを楽しもう!」




こっちが本命だ。どうだ、ふはははー! 




こーれーは、断れまい! ぼーくの戦略勝ちだーーーー!!!!




と、かくのごとく僕が、心内で高笑っていると愛里は雑誌を軽


く机に押し付け、身をのりだし僕を軽くにらみつけてくる。




「今日の真ちゃん、なんかしつこくない? なんで、そんなに出かけたがるの? いいじゃん、こーこーで、くつろぐでしょう? 何だってあるじゃない。何だってそろってる」




そうして愛里は、えっへん自慢げに胸をはる。いや、愛里は胸など張ってはいやしないのだが、そんな風な開き直りを見て取れる。




「真ちゃんって、よくわかんない人ね」




そうして、ぷいっとそっぽを向き再び雑誌を読み始める愛里。




いやいやいやいや、愛里、お前こそなぜ、そこまでかたくなに外出を拒否をする。お前の方こそ分からない。そう僕らの間で、一向にはかどらなきもの。デートだ、デート! 僕らはもうかれこれ二ヶ月近く付き合っているというのに、何度も何度も愛里宅に入り浸るも、そう! まだ青空の下、一度もデートをしていない。




いや、僕だってそんなにデート自体に興味は無い。愛里の言うとおりだ、別に映画館になんて行かなくてもいい。そうさ、映画はDVDで十分だ。喫茶店だってそうさ、あんな水商売、水のかさ増しで六百円は、ぼりすぎだ。ヨーロッパ旅行? 一体何のジョーク?




ヨーロッパ調の噴水だって? そんなもの眺めて何が楽しい? 水の描く弧の角度でも数値計算する? 水滴の落下速度でも算出する? ただ、僕らが青空の下デートできない結果、起こりうる大いなる問題、散々たる事態は……。

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