第66話
「んじゃあ、映画でも見にく?」
と再び僕。
「んー、映画ならDVDで十分だよ」
そう僕の言葉をすっぱり切り捨てると、愛里は読みかけの雑誌を机に置き、軽く身を乗り出して、テレビ脇のリモコンを拾い上げる。
「最近はぁ、録画機能が充実してるしー。いーっぱいとり貯めてるから、見たいジャンルを言ってくれたらすぐに出してあげるよ。ラブロマンスでも、アクションでも、刑事ものでも、歴史物、SF、月九のドラマもね」
と、愛里。
長いリモコンのボタンを手際よく押し、テレビ画面を操作する。僕は愛里の横顔を盗み見る。
「私、ちゃーんとジャンルごとに映画をね、分類してるの。なんかさー、最近のDVDってすごいよね。こんなに充実してたら映画館もビデオ屋もいらないね。ポイントはBSだよね。結構見たことないの一杯放送してる」
そうして、僕を完全に置き去りにして、一人ブツブツつぶやきながら、めぼしい映画を探す愛里。
「映画館はねー、せまい椅子に座ってじっとしとくのがつらいよね。大きな画面を見上げて首が疲れるし。その点、おうちはいいよね。疲れたら、ねっころがれるしー、おトイレだっていつでも行けるしー、お菓子だってバリバリ音を立てて食べれるもん。やっぱり映画なら自宅でDVDだよねー」
な、なんて、もっともらしい愛里の言い草、言い訳。だけど僕はめげない。愛里の手から、リモコンを奪い上げ言う。
「旅行でも行こうか? ヨーロッパに」
「真ちゃん、ヨーロッパまで行くお金ないでしょ? 私もお金ない」
すげなく切り捨てる愛里。一瞬にして言いくるめられたフリをして、愛里を安堵させ、実はフェイントをかましてる僕。気を緩めた愛里の隙を突き、口を開く。
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