十一章:愛里の愛し方

第65話

かくして愛里の部屋にちょこちょこ入り浸るようになった僕。




愛里の母親にもすっかり顔と名前を覚えられ、ある意味公認の仲だ。だが僕らの間で取り交わされる何かが腑に落ちない。というより何かが思うように、はかどらない。




「どっか行こうか?」




僕は、愛里の部屋に転がる読み古しの雑誌をめくりながら口を開く。すると愛里、




「えー、いいよ。ここでぇ、くつろぐじゃん」




毎度大関をちびちびやりながらの、甘ったれた口調。まぁ、ここまでは毎度いつもどおり。だけど、本日はちょっと掘り下げてみることにする。




「喫茶店でも行こうか?」




と僕。愛里は雑誌から目を離し、僕を振り返る。




「えー、喫茶店ってバカ高いじゃん。コーヒー一杯が六百円近くするんでしょう? ちょっと信じられないよね」




「喫茶店は、お店の雰囲気を楽しむんだよ」




「えーにしたって、高すぎるー。お茶なら私がいくらでも出してあげるよ。何杯でもおかわりして。紅茶がいいですか? それとも、コーヒー? カフェオレ? コークハイ? なんならメイドの格好でもしてあげようか?」




と愛里。




ユーモラスにメイドのポージングをして見せるも、なんだろう気のせい? やはりどーも、はぐらかされている。




「んじゃあ、映画でも見にく?」

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