第64話
「んとに、大丈夫なのかー? やんないだろうなー」
そう言って、ケーキの最後の一刺しを口に放る僕。
「しないしない、だって愛を感じるもの。愛される喜び、うっとり」
フォークを片手に僕にうっとりなポーズを取ってみせる愛里。
「ほんとかよー」
と、いぶかしげに言いつつも、その日なんだか、ぐっと愛里と距離が縮まったような気がした。
「あ! 真ちゃん、その指どうしたの? 包帯がぐるぐるじゃん!」
とようやく愛里。僕は眉間にしわ寄せ、歯をむき出し愛里に笑う。
「今頃気づいたか、全部お前のセイだ。だーかーら、このイチゴは没収!」
そう言って僕は、愛里の食べかけのロールケーキからイチゴを二個まとめてフォークで刺し取り、口の中に放る。
「あ、ひどーい、それ最後に食べようと思って取ってたのに」
愛里が愕然と叫ぶ。
「だからこうして奪い去られる。甘かったんだよね、ケーキが。あー紅茶がうめぇ」
僕はしれっとした顔で、カップを傾ける。
「ううう、イチゴが」
愛里はケーキの小皿を両手にし、イチゴのあったはずの空間を恨めしそうに見つめている。愛里の眉間の可愛さに思わず吹き出しそうになってしまう僕。
「これはないよぉ、真ちゃん。信じられない、ううう。フルーツロールケーキが。うう、イチゴがメインなのに」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます