第61話

「言葉のアヤだ。だがそんくらい、くそムカつくということだ。いいな、ぶっ殺されたくなけりゃ、二度とすんじゃねーぞ!」




最後はなるたけ穏やかに、だけど度重なるドスの余波でかなり物騒な言い回しで言葉をしめることになった。




言いたいことを言いまくったオレに対し、愛里はというと。オレを見上げ、ただひたすら押し黙っている。まぁ、これで恋人関係がぶっこわれてしまうならそれまでの話だ。所詮そこまでの縁。その程度のもん。あえて必死に維持することもない関係だ。




オレはなんだかんだと怒りのあまりアドレナリンがふんだんに出ていたのだろう、ただもう怒りに興奮していた。




そうして、言ってやったというえもいわれぬ爽快感で一杯だった。だがその一方で冷静なるもう一人のオレが愛里を観察していた。さぁ、どう出る? 




愛里よ。キれるか? 泣き出すか? 手首でも切るか? え? まさかカッターでオレを切りつけてくる? それはさすがに怖い! 凶器をすべて没収しておいて大正解。目の前で手首を切られても、カッターで切りつけられても、しゃれにならん。




まだオレたちはそこまでハードな修羅場を起こすほどに親密でないはずだ。まだまだ他人に近い。




オレが愛里を見下ろし、彼女の選択を内心ドキドキしながら待ち受けていると。愛里はオレを見上げ、ただこう一言。

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