第52話
ダンボールの家具屋?
愛里の言葉に、僕の脳裏の商店街にちんまりとした小店がぽっと出現した。僕が手作りしたダンボール製の引き出しやら机やらラックやら、本棚なんかが立ち並ぶメルヘンな小店だ。
そうして僕はといえば、通りかかるお客さんを引き止めちゃあ、自家製ダンボールのラックの使い勝手のよさをバカ丁寧に解説している。
だが、僕はすぐさま頭を振り脳裏に湧いた妄想を一気に掃き散らす。
(んなわけ、ないない!)
現実へと一気に引き戻り愛里を振り返ると、愛里は頬杖をつき、まだダンボールの引き出しをうれしそうに眺めている。
この愛里のはしゃぎよう。ともすれば大げさすぎて、ほんっとこそばゆいくらい。この男の立てぶり、恋人としては悪くない、なんだってしてやろうという気にさせる。だけど僕の脳裏をよぎる一抹の影。
(せめて、これさえなければ……)
僕が手にしたカッターの刃を親指の出っ張りでもって五目盛りほど押し出していると、
「ねーねー、真ちゃん」
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