第51話
愛里はというと、しばしの沈黙の後、いきなり両手で拍手を五連発×二。
「すっごぉぉぉぉい! 器用ぉ! ダーンボールでこーんなことができるんだぁ!」
そうして頓狂な声を上げると、愛里は飲みかけのワンカップ大関をよそっちょの棚に追いやって、早速うれしそうに大関とカクテル缶を一本一本ダンボールの引き出しに並べ始める。
そうして全てがキレイに並び収まったところで、その引き出しをベッドの奥にしまい込む。上部にわずか五センチほどの黒い隙間を残し、見事にベット下に収まりきった手製の引き出しを見て、僕に叫ぶ愛里。
「すごーい、すごいよぉ! キレイにしまえちゃった」
そうやって愛里は引き出しをベッド間近で感激交じりに眺めていたかと思うと、すぐさま立ち上がり、とととっと後方の戸口にまで一気に後退する。
そうして部屋から飛び出すと、再びパカッと扉を開け、遠目に引き出しを眺める。愛里の母親目線といったところか。
「うん! 見えない、見えない! すごぉーい、キレイに隠れちゃった!」
そうしてはしゃいだと思いきや、再び僕の脇に戻り、しゃがみこんで間近で引き出しを眺め始める。
やがて愛里はベッドの下の出来立てホヤホヤの引き出しをねじり紐製の取っ手でもって、何度も引き出したり引っ込めたりと繰り返し始めた。
「すごい、すごい」
とただもうひたすらはしゃぎながら。
それがいくらも続くと、さすがに僕もおかしくなって噴出しそうになった。フイに僕を振り向いた愛里とばちり目が合う。その瞬間、愛里はえもいわれぬ笑顔でかくのごとく言ってのけた。
「将来、ダンボールの家具屋さんになれるね!」
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