第43話
「わ! お菓子もあるぅ! ありがとー!」
実に嬉しそうな愛里。そうして、愛里がふと思い立った様に後ろを振り向き、なにやらごそごそし始める。
「お金。余分に買ってきてくれた分も私出すから」
財布からお金を取り出そうとする愛里に、僕は首を横振り言う。
「いいよ、僕のおごりで」
「え、でも」
「まー、今日は映画も行けなかったし、ほんとはどっかで飯でも食いたかったんだけど、こいつで勘弁して」
と、心にもないことを平気で口走る僕。生粋のナンパ師になれるんじゃないかしら。そんな僕の心の赤い舌を知ってかしらでか愛里。
「ほんとにぃ、ありがとー! 真ちゃんって、やさしーねー!」
愛里のなんて嬉しそうな顔。胸がちくり傷む。
本日の出費――
結局、見なかった映画のチケット代、二枚分。愛里宅までたどり着く、タクシー代。コンビニで大関十二本(これは愛里で差っぴいて)、フルーツカクテル三本とアーモンドチョコレート一箱。
ナッツのおつまみ一袋。その他スナック菓子などなどエトセトラ。ちょっと多めに入れていたはずの僕の財布の中身はすっからかんだ。
なんて小心者なんだ、僕は。ただ頭の中でほんのちょっぴり、いや目いっぱい愛里と出会った不運を心の奥底から嘆いただけなのに。他のヤツだったら、きっと絶対、もうとっくのとっくにとんずらこいてるさ。それでも僕はちゃんと戻ってきたのに。財布はカラ。
嗚呼――
僕はこのまま、愛里の魔性の渦に巻き込まれてゆくのでしょうか? 誰か助けて!
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