第41話

僕がこのままトンズラこくことで、ショックを受けた愛里……そのまま「死」。僕の脳裏に手首からだらだら流血をし、無残に犬死した愛里が華麗にショーアップされる。




――ショック――。




「死」のフォントがみるみるデフォルトし、立体化し、巨大化し、せり上がり、僕の背にドスンとのしかかり、僕を一気に押しつぶしにかかってくる。お、重い!! 




僕は思わず天に向かい叫ぶ。




「ち、ちがう、やり捨てじゃない! 僕はそんな不実な男じゃあなぁぁあぁぁぁーーーい!!」




僕は駆け出していた。駆けりながら、くそ重苦しい死だとか、人の命だとか、愛里の存在だとか、愛里のわけわかんなさだとか、宇宙人じみた発言だとか、手首の新旧ぎざぎざの傷口だとか、とにかく、ここ数日で出くわした愛里にまつわる何もかもから、必死に逃れようとしていた。




息をきらし、駆けりながら、僕は心で己の浅はかさをののしりあげる。




(最初に気づけばよかったんだ。どう考えてもオカしいじゃん。あの瞬間、僕はどうかしてたんだ。なぜ、愛里とラブホへ行ってしまったんだ。なぜだ! 




そうだ、愛里が誘惑するからだ。男はスケベェなんだぁぁぁぁーーーーー! 据え膳出されたら、そら食うさ。そりゃあ食うさ。食うよ。)





「第一印象は大事だ!!!」




僕は必死に駆けつづけながら叫ぶ。




空を仰ぎながら叫ぶ。




「第一印象は大事だぁぁぁ~~~!!!!」

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