第36話
(見てない! 見てない! 知らねー!!)
心の中の僕が頭をかきむしって叫んでいる。
正直、行為そのものに夢中で何も見えてませんでした。ラブホで僕に見えてたのは愛里の小ぶりな胸と、華奢な腰つきと、すべすべの桃尻。あえぎ声と乱れ髪。
それでもいくばくかの平静を取り戻した僕は愛里の左手首をつかみ、まじまじとその傷跡を見つめる。
だが、よくよく目を凝らして見ると、新たに切りつけられたらしき一本の傷跡を除き、あとはどれもこれも、すでに治りきった古い傷跡のようだ。にしたって……
「また、増えちゃった……はぁぁ」
僕の心情を知ってかしらでか愛里のため息。だけどどこか軽い。なぜ?! 恐る恐る愛里にたずねる僕。
「あのさ、つかぬことを聞くけど、この手首は何で切ったの? 何のために? こんなにいっぱい……痛くない?」
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