七章:彼女なの? 彼女じゃないの?

第34話

「おじゃまします!」




そうしてたどり着いた一軒家。突然の強引なる来客に驚いている愛里の母親らしき家人を尻目に、僕は愛里宅の玄関を乱暴にあけ、そのまま靴を脱ぎ捨て、愛里宅に上がろうとする。けれど廊下半ば、すぐに行く先に迷い家人を振り向く。




「あの、どちら……さま?」




半ば不審そうな愛里の母、青いエプロンをまとい僕に声を掛けてくる。無理もない。




「愛里さんの恋人です、一応」




だけど愛里への怒り覚めやらぬままに、ぶっきらぼうに答える僕。なんて八つ当たり。




(ほんの三日前から、そして本日もってスッパリ別れるかもしれませんが)




と思えども、もちろん口には出さない。僕はただ鼻息あらく一息ついただけ。




「愛里さんの部屋は?」




 僕の気迫に気おされた愛里の母親がぎこちなく




「あがってすぐ右です」




と二階の部屋を指差す。




愛里の部屋を目指し、突撃隊長のような大きな歩幅で階段から廊下とずかずかと突っ込んでゆく僕。僕の大きな足音が止まると同時に盛大に開かれる部屋の扉。





「おい、こら愛里!」




(すっぽかしてんじゃねーぞ!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る