第31話
いや、大丈夫、まだ巻き返しはできるさ。どんまい。
これから予定通りのロマンス映画だ。最初のは全部なかったことにすればいい。ひとたびへちゃげた心と共に立ち上がった僕は、胸ポケットのチケットを二枚取り出し握り締める。しかし、待てども暮らせども、愛里は現れない。
駅前の時計の針がぐるぐる回り続ける。僕の携帯の時計の数字もぐるぐる回り、ぐるぐる回り、ぐるぐる、ぐるぐる。
目的のロマンス映画の一本目の開演が終わり、とうとう、二本目の開演に突入。それでも愛里は現れない。愛里は現れない。現れない。
僕は口をあけっぴろげ、みるみる落ち合うカップルたちを尻目に恥ずかしげもなく、ただバカのように突っ立っていた。ただもう、ひたすら突っ立っていた。
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