六章:初カノ
第29話
最初のは全部なかったことにして、愛里と交際初めてのデート。
僕は駅前の銅像の前に突っ立ち、一人携帯で時間を気にしていた。音もなく変わる携帯画面の時計の数字が二度三度変わるのをチェックし終えるとやがて携帯を閉じる。
浮かれきって、待ち合わせより十分も早く来てしまった。僕は待ちついでに、町行く女の子を鼻歌まじりに物色し始める。
僕の脇をすっとすり抜ける女の子を見て
(あれより愛里の方がゼンゼン可愛いぞ)
だとか。また、向かいで僕同様待ち合わせているらしき女の子の横顔を見ては、
(こっちの子も結構可愛いけど、愛里の方がギリギリ上だな)
だとか、不躾にも女の子たちを値踏みする。
そうして、偶然にも本日僕の付近に居合わせた女の子たちをざっと眺め見ていて発覚したこと。愛里はこうやってみると、結構可愛い子の部類に属しているようだ。
この事実の発見にいたくご満悦な僕は、一人ほくそ笑む。そんな中、ふとファッショナブルな女の子が僕の目の前を横切り、華奢なミュールと柔らかなスカート姿で颯爽とした足捌きを見せる。
(おーいいねぇ、生足)
後姿にて視線を気取られない安心感か、不覚にもその足首にうっとりと見ほれる。そうして僕はふと思う。
愛里のやつ一体どんな格好をしてくるんだろう? やっぱ初デートだもんな、力入れてくるっしょ? 今の子みたく、華奢なミュールがいいなぁ。ミニスカでさぁ。ふんだんに生足出してさぁ。ザ・女の子の夏って感じでさぁ。
なんて、デート前のご満悦を演じてみるも、全てをほくほく顔で語るには、自らがしょっぱなに取り返しのつかない大ヘマをしてしまった事実は否めない。
愛里のミニスカ・ミュール姿どころか、もう既にスカートの中身まで見てしまっているという現実。というか、いじりました、すみません。
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