第20話

とたずねた。




黙って、だけど、どこかあっけらかんとうなずく彼女。彼女の瞳がとぼけたようにしばたく。




何かが間違ってる間違っているけど、僕は彼女をめいっぱい抱きしめた。ぎゅうぎゅうに抱きしめた。まだ出会ったばかりの僕ら、遭遇したのは合計たったの三回。




あ、そういや、まだ名前も知らないや。つい今しがたまで、確か嫌いだったハズの女。だけど、だけど、そんなのはすっ飛ばして、もうなんだか恋人みたいな僕ら。この感触がすべて!!




 ……のような気がする。彼女を抱きしめる僕の腕のなかで、




「これなら、イケそう」




彼女が何か言っていたような気がしたが、僕はもはや何も見えなくなっていた。再び彼女を僕から引き剥がし、僕は問う。




「キスしていい?」




彼女がうなづくのを待たず僕はそのまま口づけた。

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