第19話

だけど五分経っても十分経っても、何も起きない。ただひたすら手のひらが心地よい。じんわりと摩擦で温まる僕の手のひらと彼女の脇腹、腰つき。




そうやって何も起きない薄暗い公園の中でカップルのよう寄り添い、彼女の腰をなでる。慣れてくると次第に事の全てがどおってことのないことのように思え、だんだん僕は大胆に彼女の腰を撫で回し始める。そうして、僕の愛撫が心地よいのか? 彼女は猫のように目を細め、僕に笑いかける。




「うーん、気持ちいい……これならイイかも」




満足そうな笑顔。何がいいんだか悪いんだかさっぱり分からないけども




(僕も気持ちいいです)




とはいえ、最初はそれでも平然としてしていた僕も、右手で彼女の脇を好きに撫で回している内に、次第にむらむらと抑えようもないものがこみ上げるのを感じはじめていた。




ついには彼女を僕の脇から引き剥がすと、両肩に手をそえ、向き合って彼女の顔を覗き込み、




「抱きしめていい?」

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