第18話

彼女は僕の右脇にぴったりと体を寄せ、密着してきた。




彼女の体温と感触をもろに脇に感じる。鼓動すら。気持ちいい、だけど内心かなり狼狽する僕をスルーして




「この辺、撫でてみて」




そう言うと彼女は僕の手のひらを僕の意志などお構いナシに、ぴったりと彼女の腰に這わせた。そうして僕の肩に首をもたげてくる。




「は、はぁ!?」




 さすがに、彼女の今度ばかしの指示を実行するのは、ためらわれる。まだ出会ったばかりなのに。




「いいから、ちょっと撫でてみて」




と彼女の要請――とまどい。それでも僕は彼女に促されるまま、ためらいを帯びた右手を彼女の腰の上でぎこちなく動かしてみた。




折角女の子を触るチャンスなのだ、なかなかいないぞ、触れと言うなら触りましょう。だけどなんだか全てが腑に落ちない。




彼女の腰周りを撫でながら僕は思う。なんだろこれはドリームかしら? 男好きする官能小説のチープでありがちだけど、だけど実際は絶対ありえないやっすい展開。




かくして、ここで僕が彼女の腰を撫で回してるといきなり柄の悪い連中に取り囲まれて




「金を出せ!」




なんて脅され。実は結局のところ彼女は美人局でした、なんてオチを突きつけられるのでは? と一瞬脳裏をよぎる。




僕は少しびびりながら、それでも彼女の腰をなでる。何より感触が心地よかったからだ。この誘惑には抗えない。プニっと薄づきした脂肪がやぁらかいんだ。

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