第16話
と哀願してきた。彼女の唐突な要求に驚愕する僕。
「い、いや、いいけど、……あのさ、ひょっとして口説いてる?」
そうして、ちょっとどぎまぎしながら彼女に向き合った。
男とは現金なもので、つい今しがたまで嫌い嫌いと嘯いていたのに、なんだか脈があると思うと、途端に目の前の彼女が心なしか可愛く見えてくるから困りもんである。
「ううん」
彼女は僕の右手を両手に包み込み、眉間にしわを寄せたまま首を横に振る。直に感じる、彼女のあたたかいぬくもり。
「いや! ……や! でも、これ口説いてるよね?」
と僕。彼女の両手にすっぽり覆われた手を指差しながら言う。
「ううん」
相変わらず、しぶい顔で首を横に振る彼女。
「じゃ、何?」
「実験」
僕がっくり。
(これが実験ですか……って、いったい何の実験だ!)
そうして、彼女は散々僕の右手を握り締めた後、
「これじゃあ、ダメだ!」
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