四章:起きてきた

第15話

ともあれ、先ほどの言葉は訂正。




嫌いな女にあえて愛想をふりまくほど僕は女好きでもなく、お人よしでもなく……のくだり。己をよく認識していなかった。僕はどうやら、かなりのお人よしらしい。




よく知りもしない女に、タダ飯をふんだんに食らわせ、あげく、これから始まるらしき、わけのわからない実験とやらにお付き合いをしようとしているのだから。




「で、実験って?」




僕は腕組み彼女を振り返る。




「じゃあ、そこのベンチに私が座るから、並んで座って」




彼女はベンチを指差しながら言った。




僕は言われるがままに彼女と並んで腰をおろす。それから程なくして、しばし僕の横で無言にうつむく彼女の眉間に突如みるみるしわが寄ってきたかと思うと、彼女はフイに僕の右手を両手でつかみ、




「いい? 手握って」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る