第14話
「え? 面倒なことはやだよ」
『実験』という怪しげな単語を聞き、思わず腰の引ける僕。加え彼女の不審な言い回しに、僕はうっかりあからさまに嫌そうな顔を暴露し、即座に断ってしまう。
「ううん、大したことじゃないから」
彼女の言葉の末尾にかすかに
「……あなたにとっては」
という言葉が聞こえたような気がしたが、気のせいだったのかも。
そうして二時間後――居酒屋で勘定をすませた僕らは、恋人でもないのに連れなって歩いて、少し離れた公園にまでたどり着いた。恋人にしては、ほんの少しだけ遠い二人の距離感が、それでも赤の他人を感じさせる。夜の街頭が辺りを涼しく照らし出す。小さな小虫が明かりの近くをやたら飛び回ってまとわりつくのを見上げ、僕は夏の訪れを思う。
少女を改めて振り返ると、すっかり半袖が板についた僕とは対照的にいまだ長袖を着ていた。早いやつは六月からでも、もうとうに半袖だというのに。
「あれ? そういや、キミまだ長袖だね? 暑くない?」
「あ……うん」
彼女は僕の言葉にあいまいな返事をし、服の袖を片手でぎゅっと押さえて握る。その奇妙な動きを僕は一瞬怪訝に思うも、
(まぁ、女子にはやたら日焼けを気にする子もいるから)
とそれ以上突っ込むこともなく息をつく。
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