第13話

だから彼女の提案は決して悪いものではなく




(むしろ気の利いた提案だ)、




ただいかんせん、彼女を好きか嫌いかと問われると嫌いなわけで。嫌いな女の飯代を払わなければならない未来の僕を思うと、ああ哀愁。男はなんて因果な生き物なのでしょう?




(後で、やっぱり下田に半分出させよう、すっぽかしたペナルティだ)




 僕が心内で、そんなささやかなる決意をした時だった、沈黙にバツが悪くなったのか彼女が唐突に口を開く。




「お酒って、一体どれくらいで切れるんだろうね?」




「さぁね、二~三時間もすれば冷めるんじゃない?」




 さすがの僕も、かくもだんまりのお食事会は耐え難い、彼女の言葉にちょっとホッとしながら言う。が彼女、しばし考え込んだ風な顔をし、ためらった後、フイに真顔で変なことを言い出す。




「実験に付き合ってもらえますでしょうか?」

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