第12話
と彼女、カバンから突如ワンカップ大関を一本取り出し笑う。唖然とする僕を尻目に、再び嬉しそうに大関をカバンにしまい込む彼女。
「カバンにね、必ず一~二本はストックしてるんだぁ。けどね二本はさすがに重いの。だからね、普段は一本が多い」
彼女の言葉に
(なんだそりゃ)
と内心思うも
「用意周到だねぇ」
と作り笑いながら僕は言う。
「でしょう? 準備バンタン!」
(なんだそりゃ、意味わかんねーよ!)
と彼女に内心突っ込んでいると、彼女が僕の側のテーブルの椅子を引き始める。僕が怪訝そうな顔をすると彼女がこう一言。
「一緒いいよね」
「は?」
「だって、一人でコレ全部食べるの大変でしょう。手伝ってあげるよ。私も一人だし」
そう言って彼女は僕がふんだんにオーダーした料理の小鉢を指差す。
「……まぁ」
それでも一人で飲み食いするよりゃ断然マシかと思い、少女と相席するも会話はてんで盛り上がらなかった。当たり前だ、なぜなら僕は彼女を好きか嫌いかと問われるとむしろ嫌いな方だったからだ。
嫌いな女にあえて愛想をふりまくほど僕は女好きでもなく、お人よしでもなく。僕はただ黙々と酒を飲み、黙々とつまみに箸を伸ばす。そうして、彼女がそれでも多少は遠慮がちに、僕のつまみに箸をのばすサマを眺めつつ、
(ここの代金はやはり男である僕もちなのだろうか? このつまみと酒も全部……)
そう思うと、内心ちょっと面白くなかった。じゃあ、一人でこのお膳の上のもの全部食べ切れるかといえば、到底食べ切れるわけもなく、食べもしない料理にお金を払う方が、もっとばかばかしいことも重々わかっていた。
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