第11話

背後からフイに声を投げかけられる。どこか聞き覚えのある女の声。声の主を求め僕が思わず振り向くと、これまた見覚えある赤ら顔が、ジョッキを片手に微笑んでいた。




「やほ! やーよく会うねぇ! 意外とご近所さんですか?」




 “二度あることは三度ある”だから気を抜いちゃダメですよってか?




(またお前か! ゲロ&アル中女)




僕らの三度目の出会い。今日もまた例の少女はかなりの泥酔ブリで僕に陽気にからんでくる。最初発見したときは、結構可愛かったハズなのに、ゲロに酒と、お前、どんどん心証落ちてんぞ! 目の前の少女を心内でこっそりののしってみる。が、勿論口には出さない。にっこり笑いながら僕。




「やぁ、今日は大関持ってないんだね」




だけどやっぱり、心内は隠しきれないようで、口から思わず軽い嫌味がついて出る。




「大関?」




「ワンカップ大関」




「だって、ここ居酒屋だから」




彼女のしごく真っ当な返答に、そりゃそうか、そうだろうよと、僕が小さく息をついていると、




「なーんちて、ちゃんとスタンバイしてるよ!」

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