第9話

アルコールが回っているセイか、さほど悪びれる風でもない彼女。人のお気に入りのシャツを一枚おしゃかにしておいて、この言い草。それを知らないとはいえ、この態度。




(見事なアル中じゃねーか! 一体なんなんだよ!)




 僕はもう、そのまま彼女をシカトして家に帰ることにした。捨てたシャツの代わりのシャツを買いに来たのに、そんな気も見事に失せた。これで二度目だ。彼女と出くわし、まんま額を壁にぶつけたように、家へ引き戻すのは。




無言で立ち去ろうとする僕を彼女が一瞬引きとめようとしたのを背中に感じたが、そのまま気付かなかったことにして、いつにない大またで立ち去る僕。僕らの二度目の出会いも実にサイアクな代物だった。

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