第7話

彼女の最後の一言に僕カッチーン! 鼻でせせら笑うような彼女の顔。




どういうこと?! この女の言い草。酒が入っているとはいえ、どこか無責任な彼女にちょっとムカっぱらが立ってしまった。




だって、僕はあの日ゲロをひっかぶったシャツを捨てたのだから。そりゃゲロつったって、チンマリだったけど、けど、お気に入りだったのに! ゆえに僕は軽く嫌味も含めた言葉を彼女に押し付ける。




「キミにはよくあることかもしんないけど、僕にはないね。ちょっとひどいよね? 駅の構内で、あーれーはないっしょ? 周りはえらい迷惑してたよ。掃除のおばちゃんが三人も借り出されてさー。なのに、吐いた張本人のキミは、手伝いもせずにただ突っ立ってるだけだしさー」




しかもあのシャツはとびきり高かったんだ。普段の三倍、ちょっとしたブランドもんだ。前から手が出なかったのをバイト代こつこつ貯めて、ようやく思い切って買ったのに。確かにもう二年も着ていて、多少ぼろくなってたかもしれない。




だけどだけど、それでもお気に入りだったんだ。お前がゲロさえ飛び散らさなければなぁ、あと二年は着てた代物なんだよ。だから、こんなもんじゃあ気がすまない。僕は今度は彼女の手にしているワンカップ大関に言及し始める。

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