第5話

自分のゲロならまだしも、他人のゲロなんて、ごカンベン! 最悪だ。親切心がすっかりアダとなってしまった。情けは人のためならずなんて一体誰が言ったのでしょう? 




僕が袖口を諦めて、公衆トイレから出てくると、先ほどのフロアに水の入ったバケツやらチリトリやら雑巾をかかえた掃除婦のオバちゃんが三人も集まり、床磨きを始めている。例の少女は一人立ちんぼし、ただただ泣きそうな顔でうつむいていた。




(まぁ、ワザとではないのね)




僕はそこで彼女に声をかけてもよかったのだけれど、袖口が気になるし、なにより気分は最悪で、とてもとてもそこまで気はまわせず、大学の午後の講義は丸々すっぽかすことにして、もうそのまま家に帰ることにした。






そうして僕らの二度目の出会い。




(あ……ゲロ女)


 それは街中だった。

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