第32話

そこまで一気に言い終えるとミーナは大きな瞳を伏せる。




ミーナの決意を感じ取り、木崎はもう何も言わなくなった。黙ってコーヒーをすすり、しばらく考え込み、やがて口を開く。




「…俺に何かできることある?」




「電車賃をください」




ミーナはフラッシュとのメールのやり取りを木崎に見せた。デジカメの一眼レフだけれど、万一の事故のためにとアフガニスタンからチョイスされた写真が三百枚も送られている。




アフガニスタンから送られた戦地の写真は迫真を帯びている。流血流血、脅える大人や子供たち。




またミーナはフラッシュの撮った写真。ミーナの写真も見せた。きわどいものは見せなかったが、二人の一枚だけの2ショット写真も見せた。二人の愛が伝わってくる。




再び目頭が熱くなる木崎。必死に涙をこらえた。




木崎はメールとアフガニスタンの写真のコピーをUSBに収め帰って行った。別れ際に名刺を「何かあったら、ここに連絡するように」と渡してきた。




ミーナもやがて、ボストンバックに荷物と二人の思い出を詰めて、二人の愛の巣をあとにする。




「バイバイ、フラッシュさん」

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