第28話

洗面台に戻り際、言わなくていいのについ口を開くミーナ。




「ひょっとして…あいつの子?」




黙ってうなづくミーナ。




思わずテーブルに頭を打ち付ける木崎。




「何考えてんだ! あいつは? 何考えてんだ? こんなこと分かってたら絶対行かせなかったのに…」




そう吐き出すように言うとマジ泣きを始める木崎。




「止めればよかった。止めればよかった。なんで俺、あいつをアフガニスタンに行かせたんだろ? あいつがこんなにバカだとは思わなかったから。こんなバカなマネをするとは思ってなかったから。だから、行かせたのに」




立ちあがり再び壁に腕を打ちつける。




「サイアクだよ…なんなんだよ。これ、イッタイなんなんだよ…ヒドすぎるよ…」




顔を両手で覆い隠しながらも、ぼろぼろと涙をこぼす木崎。




「いいんです。彼は知らなかったんだから。それに約束したんです。あたし達は、ただ賭けに負けただけだから」




ミーナの言葉に泣きはらした目で振り向く木崎。




「…賭け?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る