第27話
その数日後――
死んだフラッシュの同僚、木崎がフラッシュの部屋を訪れた。木崎はフラッシュがフリーのカメラマンで関わった大手新聞会社の専属記者をしている。大家からカギを借りてドアを開ける。
そうして遠慮がちに中に入って行くと一人の少女、ミーナが三角座りをして薄暗い部屋に佇んでいた。思いもよらなかった美しい滞在者にぎょっとし木崎が尋ねる。
「…君は?」
「あたし?」
無表情で、木崎を見上げる少女、ミーナ。
「ヤツの何?」
「恋人です」
恋人という言葉に軽くショックを覚える木崎。そんなことはフラッシュから何も聞いてなかった。かろうじて口を開く木崎。そんな大事な存在を抱え、戦地へと赴いたのかと。
「…テレビ…」
「見ました……」
細切れの会話が成立する。見知らぬ二人はかろうじて会話を繋げる。ミーナが、ふらり立ち上がる。
「コーヒーを入れましょう」
長らくの時間を経て、シュンシュンとやかんの音がなる。お湯が沸くまで、二人の会話は完全にゼロだった。見知らぬ二人、初対面の二人でも共通の苦痛を持つフラッシュの時とはわけが違う。
ミーナから出されたコーヒーをすすりながら木崎が気づく。
「キミのは?」
ミーナは自らのお腹を見て、
「私はいいんです」
と言い「クッキーでも出しますね」と続ける。
突如つわりが始まるミーナ。動機が激しくなる木崎。コーヒーカップを置く。
「ひょっとして」
「妊娠4ヶ月です」
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