第25話
そこで意識が途切れる。
日本国民にこの映像は届かなかった。ただ、フラッシュが撃ち殺された映像だけが残る。緊急番組が引き続き流され、マイク片手に総理が登場し演説をする。
「彼の死を無駄にはできません。我々はテロには屈しない」
そうして声を高める。
「暴力などに屈しない! 断じて!!!!!」
テレビを冷めた目で見ながらミーナ。
「やっぱり完敗だね、負けちゃった…。」
ミーナは二人のノートパソコンを開く。
フラッシュから山のように届いていたメールを読む。
そこには日本がいかに平和で恵まれているかが書き綴られていた。生きることの素晴らしさを物語るフラッシュの文字列。戦地だけでなく綺麗な植物の写真も添えられている。
フラッシュが人質になる前、書き残したメールがある。
<俺は帰るよ、もう。幸せなんだよ、俺たち日本人って。だから、つまんないことで悩んだり迷ったりして。俺たちは生きてるだけで、ただそれだけで幸せなんだ。俺、ソレが分かったし、もう帰ろうと思う。お土産に写真イッパイ撮って帰るから待ってて>
「最期の最期で負けちゃった。フラッシュさんはとびきりのバカ…優柔不断の大バカ野郎…だけど、それを止めなかった私はもっと大バカ…野郎」
ミーナはひとたびきゅっと唇を結ぶ。そうして再び口を開く。
「アタシ、後追いはしないから…、アタシはアタシが死にたい時に死ぬの」
そういい残すとノートパソコンを閉じる。
突如強い吐き気を催し、ミーナは洗面台に行って吐き出す。胃液しか出ない。
(ひょっとして…)
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