第21話
日本国内の上層でしきりに会議がなされる。マスコミも大騒ぎになる。それがますます人質の生命を危ぶめると知りつつ。だが、これは、深刻な問題だ。たった一人の命のために、世界の平和が脅かされそうになっている。
日本国内、テレビのコメンテータの会話。
「総理はどうするんでしょうね?」
めがねをかけたコメンテーターが、テーブルから身を乗り出して言う。
「テロリストたちは目茶苦茶な要求をしてきていますが」
アナウンサーが口を開く。番組進行の司会者も果たしている。
「しかし、ここでテロに屈しては、日本にテロを持ち込むこととなります。断固として拒否するべきです。でなければ、これを皮切りに、国内の様々な箇所でテロが起きるようになりますよ」
再びメガネをかけたコメンテータ、作家兼コメンテータが言う。
「しかし、人一人の命がかかってるんですよ。一人の命を犠牲にするんですか? みすみす殺されるのを見過ごせと言うんでしょうか? 私にはそんな残酷なことはできません」
司会者が渋い顔で言う。
「しかしたった一人のために国民全員を犠牲にするには」
「しかし、人の命はもっとも尊いものでしょう?」
作家なのか感性が異なる。
別のコメンテーター、弁護士タレントが言う。
「だけど、なんで彼はあえてそんな危ない場所へ行ったんでしょうね? 死にに行くようなもんじゃないですか?」
そのコメントを見ていた視聴者の一人が言う。
「そーだそーだ、死にに行ったんじゃないか? あんな危険地帯に行くのがバカなんだ」
「金目当ての馬鹿なカメラマンに決まってる。馬鹿な奴だ」
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