第20話

二人は不安だった。一度は自殺を試みた二人である。まともな人生を歩めていれば、こうはならなかったのだと思う。二人の感覚がおかしいのか、現状がおかしいのか、ミーナには分からなかったのだ。




だから、フラッシュの賭けに乗ったのかもしれないと思った。ミーナは結婚して、フラッシュをうまく支えたり、子供を産み、まっとうに育てられるかどうかが不安だった。




結婚するならフラッシュさんだと思っていた。だけど、マスコミの影響かもしれない。いじめられたセイかもしれない。公園デビューができないかもしれないと危惧していた。PTAでうまく溶け込めるかどうかも分からなかった。




フラッシュのプロポーズが嬉しかった。いじめられっこを卒業し、やっと幸せになれるのだと思っていた。だけど、その先は? わが子がいじめられた時、助けられるだろうか? 自分と同じいじめられっこになって自殺を図るのでは? だったら、こんな世界に産まれない方がいいとも思った。




そう、ミーナも不安だったのだ。




ミーナも無意識の中で、賭けをしていた。アフガニスタンという戦地にフラッシュが降り立ち、写真を撮って帰ってこれるのならば、たとえ二人がこれまでどんな人生を歩んできたにしろ、二人はまだ幸運にめぐまれている、きっと二人は素敵な家庭を築けるだろうと。




「…かけに負けちゃ…った…」




フラッシュの部屋で、テレビを見つめながら、残酷な生中継を見つめつつ、ミーナがもらす。




「私も、フラッシュさんも…賭けに負けたんだね」

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