第13話

カメラは大好きだ。子供のころからの付き合いだ。だけど必ずしも職にしなくていい? だめだ! ただの家庭のパパのカメラマンで納まりたくない。いつの日か我に返った時、俺は人生に絶望するだろう。食えなくてもいい。極貧でもいい。ミーナさえ居なければ。だけどミーナは居るんだ。今、ここ、俺の両腕の中に。捨てられるか? できるわけがない。




俺はカメラだけは捨てられない。俺は化けなければならない。


化けて化けて化けて大金を稼がねばならない。カメラマンとして。




ソレが俺の愛する人と愛する物、二つを同時に保持する唯一の方法だ。




そんなことを考えていると、だんだん、人生を放棄したくなってくる。ミーナを愛せば愛すほど、途方にくれる。ミーナを失うことは俺にとっては右腕をもがれるようなもの。




だから、ミーナにそのキモチを伝えなければならない。俺はアフガニスタンに行く。確実に行く。100%行く。そうしてカメラマンとして化ける。化けられないかもしれない。だけど行く! だから、それをどう伝えるかだ。




俺はわがままだろうか? 幸せも欲しい、夢も欲しい。どちらも抱え込みたい。




昔の彼女なら、あっさり俺をアフガニスタンに旅立たせてくれたろう? だけど今のミーナ。愛を知ってしまったミーナは、もはや俺を手放さぬだろう。




徒然と考えている間にフラッシュは1駅余分に通り越して歩いていた。今は引き戻して歩いている。だけど、フラッシュはそのことにイラつくことはなかった。今はただもう少し考える時間が欲しいと。ミーナを説き伏せる言葉をくみ上げることを思うばかりだった。

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