三章:アフガニスタン

第10話

フラッシュの心内の幸福と不穏の中、記者室にて、上より号令が回る。




すかさず手をあげるフラッシュ。




「俺…撮りに行きますよ。アフガニスタンの写真」




戦地、アフガニスタンに写真を撮りに行く志願者を求める上からの声だった。記事でいくら、戦争の恐ろしさを説いてもそれはただの机上の空論でしかない。よりホンモノが欲しい。人づてではない、本物のインパクトで戦争への関心を読者に持ってほしい。上からの声だった。




それを受け、フラッシュが志願したのだ。


皆が驚いた顔をしてフラッシュを振り返る。誰一人として話を聞きはするも戦地にまで赴こうとする者はいなかったのだ。




いつも一緒に仕事をしている記者の木崎がフラッシュを廊下に呼び出して言う。




「おい、あっちは危ないから、やめとけ。俺が何とか上に話して辞退できるようにする。俺としてはお前に行って欲しくない…お前が撮りに行かなくても、写真は買えばいいんだ。上の言葉を真に受けるな」




戦地での写真は高額だ。




「今は金が欲しいし、いや、金だけじゃない。俺、カメラマンとして一皮剥けたいんだ…今のままじゃ、ダメな気がする……」

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