第14話

「おじさん、今、朝妃の名前に反応しましたね。素直じゃないですね〜。

それまで、なんだ碧空かって顔して見てたのに。」

バレていた。碧空にバレていたか。



朝妃が亡くなって来年で11年…。



毎月欠かさず、朝妃の仏壇に手を合わせに来てくれている、碧空。



何も飾っていなかった朝妃の仏壇を見ても、何も言わずにいた碧空。

いつも、花や好きだった食べ物、好きだったゲーム、漫画…愛妃時代の写真。



碧空が持ってきてくれるものを通して、俺は朝妃という息子を知る…。

毎月、碧空の訪問が楽しみでもあった。



知ることができない、朝妃の姿を…碧空と通して知る。そして、妃響のことも。



1日1日が、仕事と子育てに追われて過ぎていくだけの日常の中での光。



最近は、専ら…朝妃ばかりに懐いて碧空を兄として見ない翔馬の愚痴を聞いているが。




碧空:「麻紀さんって、おじさん…史哉さんのこと大好きですよね。」



麻紀………?


あの日以来―――翔馬の母親が誰なのかを告げた日から、あまり口に出してこなかった、麻紀と言う名前。



ドクン、と心臓が脈を打つ。

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