第93話

父:「優哉は止めたと思うぞ。」


妃響:「うん、止められたよ。本当に聞きたいのか?知ってどうするんだ?って優哉さんには言われてた。」




「なあ、妃響。」


「なに、優哉さん?」


「妃響は今、菜緒のこと、朝妃のこと、母親のこと知ろうとしてる。」



「うん、そうだね。」



「知ることが幸せとは限らないよ。まだ高校生の妃響に全ては受け止められない。」



「でも、俺は知りたい。俺と朝妃年子なのに、何で父親が違うのか…何で父さんは…………」




父さんは……


その後に続く言葉を

発することが俺は怖かった。



抱いてきた気持ちを


目を逸らしてきたことを


事実として


受け止める事が怖かった。




「妃響、思う事があるんだろう?」




うん、あるよ。


沢山、あるんだよ。


言葉にすることが怖い。




泣き出した俺を


優哉さんは

何も言わずに


そっと、抱き締めてくれた。




父さんにもされたことがない

抱き締める、という親からの愛情。


優哉さんが父親なら

良かったのに………


と、思う瞬間だった。

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