第85話

父:「どうしようもない兄貴が居た。今、どこで何をしてるかもわからない。」


妃響:「兄貴?親父と優哉さんの兄貴?」


父:「そうだ、兄貴が居る。俺と7つ違いか……今は60超えてるのかな。」


妃響:「うん。」


父:「玖賀を継いでられるか、俺はこんな家に縛られたくねえって言ってさ、高校卒業と同時に家を出ていった。」


妃響:「うん。」


父:「それから会ってない。音信不通だ。生きてるのか、死んでるのかもわからない。」


妃響:「うん。」


父:「姉も妹も出ていった。玖賀の家は偏見、差別的な目で見られる。まともに学校生活も送れなかった。」


妃響:「うん。」


父:「一番信頼して、唯一無二…の存在の優哉ですら出ていってさ。」


妃響:「うん。」


父:「俺は玖賀の家が嫌いになった。兄貴も姉も妹も優哉も奪われた。でも、俺しか継ぐ人は居ないし、ここで生活を立てて居る人も居る。跡継ぎ放棄して、俺も出ていく選択はできなかった。」


妃響:「うん。」


父:「でも、梨絵子のことはこの世界に踏み込ませたくなかったってのが本音。好きだからこそ、菜緒を玖賀で引き取って梨絵子は別の人生を歩んで欲しかった。」



妃響:「うん。」

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