第14話

そんなある日のことだった。

1993年3月の終わりのことだった。



母は破水したのである。

すぐさま大学病院へ搬送され

子宮収縮薬の投与、入院となった。


まだ妊娠23週。まだ生まれてはいけない。

肺も心臓も脳も全ての臓器が未熟で

あるからだ。


生まれたとしても生存率は高くない。



母は膨らんだお腹にそっと手を置き

『まだダメだよ、出てきちゃダメだよ』

と泣きながら語り続けた。



母も6人の子を育ててきた。


だからこそ、わかる。



今生まれてしまうとあまりにも

小さすぎる。無事にうまれる保証もない。




医者である母の兄弟もそれは十分に

わかっている。危険だと。

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