第85話

人気のない、廊下で―――……


頭を抱えて、座り込む。



朝妃を失い、妃響も失うのか………



俺は、結局―――………

妃響を助けてやることもできない。


戸籍上の父親な、だけ。



妃響が、優哉を慕う理由もわかる。



「おじさん!おじさん!

しっかりしてください!生きてます!

妃響は、必死に生きようとしてます!」


「…………あおい、か………。」



翔平から、聞いていた。



撃たれた傍に、碧空も居て。


何らかの事情を知っていると思う。

もしくは、妃響が何かしようとしてて

止めようとしていた、かも……と。



病院に居たのか、碧空も………。



「輸血は?おじさん…輸血は?」



碧空も、輸血してくれたのだろう…。


腕に止血止めのシールが貼ってあった。



友人の碧空が、輸血してくれたのに

父親の俺が輸血できないなんてな……



情けねえ。父親なんていえねえ……。

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