第67話

「ううっ……グスッ……グスッ………ひいにいっ……行かないでえっ………」


梨絵子の精神の波が安定しなくて

煌妃の泣き声にヒステリックになったり

甘えることを拒絶したり―――……


母親からの愛情をほとんど

貰えることがなかった、煌妃。

それは、燈妃にもいえること。悠妃も。


朝妃の態度も、

煌妃の恐怖心を煽り、離婚する前よりも赤ちゃん返りが強くなったと思ってる。



俺は、知らなかった。



6歳の煌妃が抱えていた苦しみに。


妃響も気付いていなくて。

長年、見逃されてしまってきた。



苦しみが表に出るようになったのは


今から―――………4年前のこと。



中学時代からの親友の、陽真君を亡くし

チームが崩壊して、初めて表に表れた。



それまで、気付かずにきてしまった。




「煌妃っ、泣き虫さんっ。」


泣き虫さんって言いながら、

煌妃を抱き上げ、涙を拭く妃響。


煌妃は、妃響の肩に顔を埋め

洋服を掴み、「いやーやっ」と言って

泣き続けている。



その足元に「んんっ!ゆーひもっ!ゆーひもっ……抱っこぉぉぉぉ……」


妃響の足に抱き着き、泣き叫ぶ悠妃。



朝は、煌妃と悠妃を

妃響から引き離すことが大変。

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