第83話

父:「お母さんのことも朝妃のことも口に出していいんだよ、妃愛。」



自分だけがお母さんからの愛情を

もらった――自分だけが、あっくんからも。



俺たちは確かに母さんが出て行って

家に、" 母親 " という存在は居なくなった。


親代わりだった朝妃も荒れて

居ないも同然に――。


それは、それで……当時の状況を

思い返すと仕方なかった部分も多かったし

玖賀の問題、夫婦の問題も重なって

母さんも朝妃も不安定になっていた。



―――― 妃愛の責任ではないんだよ。



そう、伝えたいのに伝わらない。



長年心に降り積もった雪は

簡単には溶けてくれない――。

氷になってしまって……

太陽の光を浴びないと――溶けない。



妃愛の心は――


今、氷のように凍っている。



―――― 固く凍っている。

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