第90話

「朝妃、調子どう?」



「ん…あいり?ごめん…まあまあ。」




悠太くんと会ってから数日。



1ヶ月以上続いた残業と両親との関係、妃愛のことで悩み倒れて救急搬送された俺。

急性ストレス胃炎で胃に穴が空いてたとかで、入院治療になった。



1週間ほど入院したけど、相変わらず無断欠勤のまま、父親と妃響とは会ってない。

妃響と蒼哉に「しばらく休む。」とLINEで伝え、蒼哉には「もう限界。仕事辞めようと思う…」と正直な気持ちを伝えた。



「お前、今どこに居る?とりあえず話聞くから会おう。予定合わせる。」と返事が来て、俺が返信しないからか着信もきたりしてる。



兄貴の蒼哉、奏汰にも、姉の菜緒にも

出生のことを薄々勘づき始めたころから距離を置いている。

とは、言っても甥っ子とは会ってるが。



自分のこと、仕事のこと、妃愛のことで精一杯だ。

だから自分の身体を気遣う余裕がなくて倒れるまで自分を追い詰めていたみたい。

愛梨に泣かれて「辛いなら辛いって口に出して。朝妃がひとりで抱えることじゃないでしょ、私達は夫婦だよ?」と言われ、俺の胸は締め付けられた。



俺が苦しんでる姿を愛梨はずっと見てきた。




あの頃から何か変わっただろうか?




子どもが増えただけで、

俺は何も変われていない。




「仕事は無理しなくていいから。

私、仕事行くけど大丈夫?」



「ん、大丈夫。」



「妃愛、退院してるけどまだ安静にしてないといけないから、

大丈夫ならでいいんだけど、妃愛のお昼ご飯とか頼んでいい?」



「ん、わかった。行ってらっしゃい。」



「うん、行ってきます。」




愛梨が仕事に行き、四つ子は学校。



中学生、小学生組も学校に行ったから家には俺と妃愛のふたり。

二人して体調は万全ではなく、安静の指示が出ている―――…。



お昼ご飯…か。何が食べられるんだ?



悪阻が重いとは聞いているが、人それぞれ味覚が違うし、

愛梨の妊娠と娘の妊娠は違うから何をしていいかが分からない。



悠太くんは学校か。





参ったな―――…どうしようか。

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