第88話

「久しぶり…だね、悠太くん。

倉庫押しかけてごめんね。」



「いえ。」



緊張してるのが伝わってくる。



そりゃそうだよな、突然、彼女の父親が倉庫に訪ねてきたらびっくりだよな。

しかも、煌妃と悠妃の兄貴だしね。




悠太くんが心配なのか、倉庫の入り口から煌妃と悠妃が俺たちのことを覗いてる。

視界に入れながらも、今は弟達は関係ないし、スルーして悠太くんに「とりあえず…ノープランだけど、ドライブしながら話したいんだけど…」と告げる。



「はい、わかりました。」と言って、

悠太くんに助手席に乗るように促す。



弟達も乗せたこと無かったな…そういえば。

家族以外だと悠太くんがはじめてだと気付く。

何もかも俺が家族と距離を置いてるからなんだけど…。







しばらく車を走らせる。



無言の車内。



言いたいことは沢山あるけど、俺も似たような人生を送ってるから悠太くんを責めることは違うとわかっている。




3代揃って似たような人生。




俺はつくづく、母親と父親の子どもとして育ったんだと改めて思う。

実の父親も、似たような人生なだけに、玖賀の血か…ってなる。




「あの、朝妃……さん。」



無言に耐えれなくなったのか悠太くんが口を開く。

何から話し出すか俺も悩んでいたから話はじめてくれて、ありがたい。



「ん、なにかな。」



「えっと―――…その、煌妃さんと悠妃の……お兄さん…なんですよね?」




ん?そっち?妃愛のことではなく?




「まあ、一応…一応、そうだね。」



「じゃ、じゃあ…あの、悠葵さんと歩夢は……」



「俺の兄貴の息子。甥っ子だね。

悠葵、歩夢、龍人が甥っ子。」



「え、と―――…え、?」



疑問に思うよな。悠太くんも。



弟の煌妃と悠妃よりも、悠葵、歩夢と過ごしてる時間のほうが長いし、

「なんで?」って思うのも玖賀家の事情を知らないとわからないと思う。



煌妃と悠妃の兄貴は蒼哉って思ってるだろうし、蒼哉の子どもは女の子だし、

混乱しても仕方ないと思う。




「俺の実の父親は永城、つまり悠葵と歩夢の父親の父親が俺の実の親。

だから俺の甥っ子にあたるってこと。

煌妃や悠妃達は従兄弟の関係になるのかな?悠葵と歩夢の父親と。」



「そ、そうなんですか―――…。」



「複雑…なんだよね、関係が。

四つ子とかも煌妃、悠妃からしたら甥っ子と姪っ子の関係なんだけど、ね。

ちょっと、そこは事情があって…って感じ。」



「なる、ほど―――…。」




疑問に思うのも仕方ない。




俺は弟より、甥っ子達との方が仲がいいから。

兄貴にも俺の家族は話してないけど。

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