第84話

愛梨と二人、抱き合っていたら

2階から誰かが降りてくる足音がする。



末っ子の三つ子は寝てる時間。



中学生の三女、妃恋はテスト期間中だからまだ勉強してるだろう。

兄弟一、成績優秀で中学受験で入学してから成績はTOP5の中に常に居る。

休憩の為に降りてきたのだろうか?



長男、次男、次女はバイトみたいだし…妃愛が俺が帰ってきたのわかって降りてきてくれたのか?



「ママ。」



「ん?妃愛、どうしたの…?あら、顔色悪いわね。」



「うん……気持ち悪い……なんかフラフラしちゃって…」



「夜間外来…行ってみる…って言っても妊婦の夜間外来…行けるかな。

明日の朝イチ、産婦人科受診しよっか?」



「うん…でも、お仕事……」



「なーに。妃愛が、気にすることではないの。妃愛ははじめてだから不安も多いでしょ?ママが居るから大丈夫よ。」



「うん……ありがとう。」




悪阻が重いらしい妃愛は安定期に差し掛かっているけど、悪阻で食事がとれず

入院ギリギリの状態だと愛梨から聞いたのが数週間前。



ここ数週間、残業続きだったから妃愛と顔を合わせてなかったけど、

妊婦なのに、前よりも痩せている。

悪阻で食べれないのだと、言われなくてもわかった。




恐らく、明日、妃愛は入院になるだろう―――……。




悪阻ではじめての入院。



愛梨も俺も経験が無いから無事に出産を迎えられるのかが、不安ではあるが…

もう、認めざるを得ないんだろうな…




母親の顔になってきてる妃愛に対して

今さら「出産を認めない」とは言えない。





生命の重さを四つ子は知っているから。






末っ子の三つ子が生まれた時のこと。






数年前に立て続けに流産、死産が続いたこと。





四つ子が傍で見てきたから、妃愛が出産を選択することに迷いは無かったと思う。






俺が、受け止められてないだけだ。

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