第83話
「朝妃、妃愛と悠太くんの話聞こう?
あの子達に考えてるの。朝妃が拒絶してたら、妃愛との溝が生まれてしまうよ。」
半分、涙声の愛梨の声を聞くと胸が締め付けられる。
何度も何度も、両親と向き合おう?子どものこと伝えよう?って言ってくれている愛梨を拒絶し続けてるのは、俺だ。
俺のちっぽけなプライドと恐怖が邪魔をして前に進めないでいる。
「最近、ミスが続いてて…、あの人にも妃響にも心配されてる…。
多分、母親も心配してるけど、何か言いたそうにして、黙って見守ってくれてる……みたい……潮時、かな?」
「朝妃……。」
「どうしても、被るんだ。
母親も16歳で産んでるし、愛梨も18歳で産んでる。嬉しかったけど、避妊に…って考えが過ぎるんだ…。
父親が当時どう覚悟決めたのかも、気になるけど、俺は―――……。」
思うだけで、何も動けない。
低出生体重児で生まれた四つ子だけど何の障害もなくスクスク育ってくれてる。
ここまで無事に育ってくれたことにホッとしていた矢先の、長女の妊娠…。
愛梨の両親は―――……
父親の両親、母親の両親は息子、娘に告げられてどう思ったんだろう?
祖父母にも会える距離ではあるけど、父親と半縁切り状態の俺は何年も会ってない。
「今こそ、踏み出す時じゃない?
妃愛の赤ちゃん、史哉パパ、梨絵ママ
朝妃のおじいちゃん、おばあちゃんのひ孫見せてあげようよ?
朝妃は悩んでるけど祖父母からしたら朝妃は孫に変わりはないんだから。」
そう、俺は孫には変わりない。
父親が違うだけで、育ての父親、玖賀史哉とは血縁関係がある。
父親の双子の兄が俺の実の父親だから。
「朝妃、前にすすもう?」
「…………あいり。」
何年も踏みとどまっている俺を見捨てず、突き放さないで、
子どもを産んでくれて、子育ても家事もしてくれる愛梨に感謝しかない。
踏み出す…時なんだろう、今が―――…
―――……トントントン。
誰かの足音が聴こえる。
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