第81話

「朝妃」



愛梨の声がしたと思ったら、俺に抱き着いている、愛梨。

何人産んでも、愛梨は可愛いままだ。

愛梨以外、眼中に無い…それくらい今も愛梨に夢中の俺。



「朝妃自身が、自分のこと受け止められてない?」



「………。」



「そろそろさ?梨絵ママと史哉パパと向き合ってみない?

当時の状況も梨絵ママのお兄さんから聞いたんでしょ?

朝妃が当時の苦しい状況のまま生きてるの私見てて辛い。だから子ども達には幸せになってほしいこともわかってる。」



「……うん。」



「妃愛は17歳、高校生だけどね?

未熟かもしれないけど、もう母親の顔してるの。どんなに反対しても、朝妃、妃愛は母親になろうとしてる。」



「………。」



「幸せになってほしいそれは私も一緒。

一番負担かけたことも気にしてるんでしょ?そういうことも、朝妃、口にしないと妃愛には伝わらないよ?

今してるの、朝妃と史哉パパと同じことだよ?」



妊娠がわかったとき、避妊に失敗したことが真っ先に浮かんだ。

愛梨に申し訳ないことをしたと、そう思う俺を愛梨はビンタしてきて「私は産む!大好きな朝妃との子どもだもん!

年齢なんて関係ないでしょ!」と、不甲斐ない俺を一喝してくれた。



俺は未だに、入籍してることも親に内緒にしてるし、子どもがいることも話してない。

家も教えてないから孫に会うこともない。



四つ子の中で一番、小さく生まれた妃愛。



「パパ、パパ」って妃菜梨と俺の取り合いをして泣いてる姿もよく覚えてる。

思春期に入って、妃菜梨と妃恋は話してくれるけど、妃愛だけは反抗期で、

俺に反抗ばかりしてくるんだ。



付き合っていた彼が、

俺が作った「愛妃」のチームの子と知った時に猛反対して、そこからさらに溝が生まれた。




俺が「愛妃」の創設者だということを妃愛は知らない。





俺が創設者だと知ったらどんな反応をするのだろうか?

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