第68話

「史哉が結妃ちゃんと上手くいかなかった原因はひとつしかない。

アイツはずっと逃げてるから、結妃とも妃愛とも向き合えないって言ってました。」



「…………ああ。」



「史哉さん、妃愛は貴方のこと嫌ってませんよ。思い出はあるんです。

貴方は向き合おうとではなく、いつも怖がってきた。結妃と同じことを繰り返すんじゃないかって。」




いつも怖かったよ。



結妃に家を出ていかれ、奥さんとの関係も悪くなって離婚。




結妃が亡くなった後に生まれた娘は、怖くて、怖くて。

また犠牲にしてしまう……なら、嫌われた方がいいか?って思った。




父娘の絆なんて脆い。




12年過ごしてきたけど、俺は妃愛のことを何も知らないんだ。





「結妃は妹さんではないですよ。

妃愛も結妃ではないんです。

結妃、妃愛、個人と向き合えませんか?」



「…………。」






重ねていた。





俺は、妹を娘に。




娘を娘に。





" お姉ちゃんの分まで幸せになって "






残酷な言葉。





俺は、愛してるが故に……言っていたけど、結妃の認識は違っていた。








押し付けられて幸せになんかなれないよな。

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