第43話

何故か、元妻でもなく、息子たちでもなく俺を真っ直ぐに見た子ども。




「オマエは誰なんだ?」って思ってるのが伝わってしまったのか、分からない。



確実に、俺を見て哀しそうな目をして、目を逸らした子どもに俺は初対面で嫌われたと確信した。



あの目は……かつて、四女の結妃ゆいが妊娠して家を出るってなった時に

「お父さんさあ、いい加減にして。私はしんどいの。」って言われた時と似ていた。




いや、似ていたではない。




同じことを繰り返したんだ。





しんどいって何?



俺は、結妃が大切で心配だから…って言ったら「それが嫌なの!しんどいの!いい加減にしてよ!言わないと分からないのっ!?」って言われたんだ。




身に覚えがない…そう。結妃に何を言われているか分からなかった。




「菜緒?妃葵ひまり、妃芽乃?私は誰の代わりなの?双子だった妃芽乃が死んだから片割れの私には生きてほしいって…?」




何を言ってるんだろう?



結妃は。何を言ってるんだろう…って思った。




そんな訳ないのに。





結妃が、菜緒や妃葵、妃芽乃の代わりなんて……




「お姉ちゃんの分まで生きてほしいってどれだけ残酷な言葉か知ってる?

言われ続けた私がどんな気持ちだったか分からないでしょ!代わりなんだって!

お姉ちゃんの代わりになって、お父さんを慰めないといけないんだって。」



「そんなこと―――……」





" そんなこと思ってない " って言おうとしたけど、泣いている娘にいえなかった。




結妃を苦しめてきたんだ…って気づいた時は遅かった。




" 私の家族はここの家にはない。だから自分で築く。今日でサヨウナラ。 "





去っていく娘の後ろ姿をただ、ただ見ることしか出来なかった。

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